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2015.04.16

「家がつむぐ物語―家糸プロジェクトのはじまり」04

家糸プロジェクト
『家がつむぐ物語―家糸プロジェクトのはじまり』

INTRODUCTION

ゆとりある街並みと豊かな緑。閑静な住宅街として知られる田園調布のまちで、ひときわ目を惹く洋館。一度見たらきっと忘れないこのお家は、実はライフスタイルプロデューサーとして活躍する、村上萌さんのお祖母様のお家でした。
木造モルタル塗り、2階建て。美しく趣向を凝らしたたくさんの窓と、凝った屋根の形。90年余りもの歴史を持ち、2000年には登録有形文化財にも登録された貴重な建物。そして何より萌さんたち家族の思い出が詰まった大切な家ですが、お祖母様が2014年春に亡くなり、残念ながら土地ごと手放さざるを得なくなってしまいました。

「たとえ家がなくなっても、この家に刻まれた記憶を未来へつないでいきたい」と考えた村上さんは、リビタに相談。一夜限りの建物見学会の開催と、扉を中心とした部材を取り外し、家の物語とともにリノベーションを通じた新たな場づくりへと受け継いでいくことになりました。
それが、2014年冬にスタートした「家糸(いえいと)プロジェクト」です。

11月末日。お祖母様が亡くなってから「まだ、おたまひとつ片付けられていない」というこの家で、萌さん、旦那さま、そしてこの家で生まれ育った叔母さまが、この家の物語を聞かせてくれました。

 目次
INTRODUCTION
Scene.1:ある家族の物語
Scene.2:大好きな「ばあば」の記憶
Scene.3:物語を宿した部材たち
Scene.4:「家糸」をつむぐ

 

プロジェクト名に込めた思い

この家が取り壊され、なくなってしまうことが分かったとき、たくさんの人たちがこの家を惜しみ、残念がりました。けれど「残したい人」「住みたい人」は多くても、田園調布でこれだけ大きな土地を買って「住める人」は、なかなかいません。日本の一般的な住宅市場では流通させにくい(買える人がごく限られている)ため、売却後は手が届きやすい広さに土地が細分化され、それぞれ別の買い手の手に渡ることが予想されます。となれば家は当然、解体されてしまいます。
お祖母様が亡くなり、この土地を手放さざるを得なくなった時、萌さんたちは思い出の詰まった家だけを別の場所に移築することも考えたといいます。ですが、

「全然別のところ、たとえば山奥にこの家があったら行くのかといったら、行かないと思う。かといってお金だけで取引されてしまって、この家のことをよく知らない人が住んでしまうのもいやで。でも場所が続くことって、家が残ることだけではないと思ったんです」

仕方のないことを残念に思うだけではなく、前向きに、今できることを考えよう。そんな萌さんの想いと「モノやストーリーを継承することは、丁寧な暮らしにつながる」というリビタの価値観が出会った時、「家糸プロジェクト」は動き出しました。私たちがまず決めたのは、これから住む家を考えている人たちに、こういった現状や価値を知ってもらうために建物の見学会を開催すること。そして、家族の思い出の詰まったパーツ(扉や窓といった建具、作り付けの家具など)を信頼できる人たちの手で取り外し、新たな場づくりに活かすことでした。
「家糸」というプロジェクト名には、どんな意味が込められているのでしょうか?

「小さな頃から見慣れたキズなど、あるストーリーを持った部材が別の人の住む家に活かされ、そこからまた新しいストーリーが紡がれていく。そうしたつながりを図に描いていったら、家系図みたいな、温かいつながりが見えるんじゃないかなって。“糸”と“系”とは一字違い。これからそんな家系図―『家糸図』ができていったらいいなと思っています」(萌さん)

まるで家と家とが、親戚同士になるように。
12月半ばには、この家の物語を伝えるための建物の見学会を開催。平日の夜、一晩限りのイベントでしたが、リビタのClub ReNOVATION会員のほか、この建物に思い出のあるご近所の方々など60人ほどのお客さまが訪れ、この家の物語に耳を傾けました。
庭で採れた梅を使った梅酒や、田園調布商店街でカフェを営む『スジェールコーヒー』さんの自家焙煎コーヒーが振る舞われる中、まずはリビタが田園調布の街やこの建物について、時代背景とともにご説明。また、古い建物のパーツを取り外して、新たな使い手を探す仕組みとしてアメリカ・ポートランドにあるパーツセンターについてもご紹介しました。
そして萌さんからは、この家に詰まった思い出や、一家の暮らしぶりについてお話していただきました。90年余りも営まれてきた暮らしの手ざわり、積み重ねられてきた時間の豊かさを体感していただけた、貴重な機会でした。

そしてその翌日。青空の下、パーツの取り外しが行われました。HandiHouse project、アラキ+ササキアーキテクツといったパートナーの力を借りながら、リビタの社員自らが建具や棚をひとつずつ丁寧に取り外し、綺麗に拭き上げ、庭で1枚ずつ大切に梱包。真冬にも関わらずぽかぽか陽気な1日で、昼食は昔から萌さん一家がそうしてきたように、みんなで庭でのピクニックを楽しみました。

これらのパーツは今後、リビタが手がけるリノベーション物件を中心に、この家のストーリーとともに継承されていきます。第一弾は、前号でもご紹介した通り、commun246に萌さんのオープンしたサンドイッチ屋さんへ。

そしてゆくゆくはこうした味わい深いパーツたちをリユースできるような仕組みをつくっていきたい、と考えています。


お気に入りの扉の裏側、窓の下、階段の踊場―子ども時代の思い出の詰まった秘密基地が別の住まいへと受け継がれ、また誰かの秘密基地になる。このプロジェクトではこれから、そんな宝物のような「家糸」をひとつひとつ、つむいでいきます。

 

 

<プロフィール>

[語り手] 村上萌 |  「NEXTWEEKEND」
“次の週末に取り入れたい”をコンセプトに、今より少し先の理想のライフスタイルを提案。株式会社ガルテンを設立し、ライフスタイルデューサーとしてウェブマガジンNEXTWEEKENDを主宰。

 

[聞き手・執筆] 石神 夏希 | 「場所と物語」
演劇、文筆、コピーライティング、プロモーション企画、リサーチ、地域に根ざしたアートプロジェクトなど、さまざまなジャンルで一貫して「場所」と「物語」を行き来しながら活動。(撮影:菅原康太)

 

 

<パーツ取外し協力>

A+Sa   | アラキ+ササキアーキテクツ
荒木源希+佐々木高之+佐々木珠穂を中心に、 建築やインテリアのデザインを行う一級建築士事務所。 A+Sa設計方法論 [hands-on approach]。

HandiHouse project  | ハンディハウスプロジェクト
合言葉は『妄想から打ち上げまで』。デザインから工事のすべてを自分たちの『手』で行う集団。

 

パンの間に季節を挟んだ、小さなサンドウィッチ屋 “GARTEN”

<コーヒー提供>
SUGER COFFEE   |   スジェールコーヒー 
SUGER=「すじぇる」とは「ごちそうする・おもてなしをする」という意味で使われる山形県朝日町の方言。田園調布の街で自ら焙煎し、フレンチプレスで抽出したコーヒーを提供。

 

目次
INTRODUCTION
Scene.1:ある家族の物語
Scene.2:大好きな「ばあば」の記憶
Scene.3:物語を宿した部材たち
Scene.4:「家糸」をつむぐ

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