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「部屋名のない居場所を楽しむ!」02 納谷建築設計事務所×HOWS Renovation

「HOWS Renovation(ハウスリノベーション)」は、新たな事業パートナーとして、新鮮な発想で多くの住宅実績ある納谷建築設計事務所との取り組みをスタート。その第一弾となる「井の頭の家」の竣工をきっかけに、リビタのHOWS Renovation担当者が、設計を手掛けた納谷新さんのご自邸「360°」を訪ねました。芝生の屋根や広いデッキなど、豊かな外部空間を備えた「360°」と、玉川上水を目前に望む「井の頭の家」。たくさんの共通点がありそうな2つの家について、じっくりお話をお聞きしました。

出演者

納谷 新 Arata Naya

1993年納谷建築設計事務所設立。個人住宅のほか、最近では幼稚園の校舎や気仙沼での震災復興の仕事もしている。釣り、バイク、車、キャンプ、カヌーなど多趣味。

 (http://www.naya1993.com/)

田中 亜沙美 Asami Tanaka

リビタのHOWS Renovation担当。事業・プロジェクトの企画やセミナーの開催、WEBサイトの運営など戸建てリノベーションに関わること全般に取り組む。

(http://www.rebita.co.jp/people/people67)

Scene2:洗面室にソファを置いて寝てもいい「井の頭の家」

「井の頭の家」外観。玉川上水の緑と遊歩道に寄り添うように佇む。©吉田誠

田中

納谷さんは普段、お施主さんがいらっしゃる注文住宅のお仕事を手掛けることをが多いと思います。今回の「井の頭の家」は、まだ住む方が決まっていない状態で設計をしていただいたわけですが、設計の仕方などはいつもと違っていたのでしょうか?

納谷

一つはリビタのスタンスを共有することで、方向性が定まったということがあります。もう一つはこの辺りの地域性を考えて、例えば「自転車を持っている人が多そうだから、土間は広いほうがいいかな」とか、少しずつひも解いていくという感じですね。ただし一般的に考えていくと、万人に受ける普通の家になってしまうので、そうならないようにしています。万人に受ける家とは、間取りから動線、照明の照度など、すべてにおいて全体的なターゲットの平均値をとってつくっていると思うんですよ。でも、その平均にぴったり合う人って、一人もいないと思います。皆どこかに個性を持っているはずだから。そういう意味では「井の頭の家」は、平均的なものではなないと思う。だけどすごく個性的な方向に偏ったものではなく、多くの人が暮らしやすいと感じてもらえる家になっています。

「井の頭の家」1階。部屋名のつかない居場所がたくさんある。©吉田誠

田中

規格化・パターン化された一般的な住宅とは、空間のつくりかたや使っている素材も全然違うけれど、決して住む人を制限するような特殊な住宅ではないですよね。そんな中で「井の頭の家」が完成して、納谷さんご自身も住みたいと思える家になりましたか?

納谷

自分だったらどう使うんだろうと、シンプルに興味があります。1階の引戸をすべてガラスの扉にしたことで、すごくユニークな空間になったと感じています。どっちが内か外かわからなくなるよう感覚が好きですね。

吹き抜けごしに見えるのは、敷地内の大きな桜の木。木漏れ陽が壁や床にゆらぐ。©吉田誠

田中

玄関から入ったときに、吹き抜けを介して大きな桜の木が見えてとても印象的なのですが、春には満開の桜が楽しみですね。

納谷

あの桜の木はこの家の象徴として、絶対に取り込みたいと思ったんです。玉川上水に面したこの敷地の大きな特徴なので、どう関わっていくかというのは、設計の重要なポイントになっています。

ウッドデッキと同じ樹種のフローリングが室内に続く2階の一角。©吉田誠

田中

玉川上水の自然を取り込むことで、なんだか別荘にいるような感覚になりますね。中庭を部屋につくり変えたこと以外に、工夫されたことはありますか?

納谷

2階は屋外のデッキを、屋内に取り込むようなイメージで設計しました。屋外なんだけど、インナーテラスのような居心地を感じられると思います。

洗面室の大きさに違和感を感じる方も多いはず。その違和感にこそ、既成概念にとらわれていることに気づかされる。©吉田誠

納谷さん自邸「360°」については、Scene01へ。©Photographers space 

田中

大きな特徴としては、洗面室がすごく広いですよね。大きなソファが置けるほどの面積があります。

納谷

「洗面室=顔を洗う場所」と考えがちですが、「井の頭の家」の洗面室はただ広いだけでなく、ここで読書をしてもいいし、昼寝をしても気持ちいいと思いますよ。この家は部屋名がついていない空間もあるし、「ここで何をすればいいんだろう?」という空間が多いですよね。だから、住む人には使い方を子供のような自由な発想でイメージしてほしいんです。気持ち良ければどこで寝てもいいわけですから。僕も自宅の屋根でテントを張って寝ようとしていますしね。そういう自由な暮らし方ができる家のほうが、住んでいて楽しいと思うんですよ。

玉川上水に面したバルコニーは、ダイニングやワークスペースにしたくなる。©吉田誠

田中

「井の頭の家」は、ダイニングテーブルを置きたいと思える場所がたくさんありますよね。普通に考えると、キッチンの近くに置いて、奥にソファなんですけど、デッキが見える場所に置いても気持ち良さそうです。ダイニングテーブルを2つ置いて、その日の気分によって食事をする場所を変えたり、1階の桜の木が見えるところで食事をするというのもいいですね。用途を決めない空間、つまり余白が沢山あって、本当に自由な住まい方ができる家ですね。

納谷

食事をしたい場所は、その日の気分で変わるし、一日の中でも変わるかもしれないですよね。それでいいと思っているのですが、皆やらないじゃないですか。そういう場所がなければ、ダイニングテーブルでしか食べないんですよ。だから、そう思える場所をたくさんつくりたいと思いました。僕も自邸ではウッドデッキに直接ラグを敷いて、家族でよく食事をしていますよ。部屋名はあるけれども、それは名前を付けているだけで、そのように使う必要なないんです。パレットの上で、赤と青の絵の具が混ざり合うような場所があっていいと考えています。むしろそういう場所がすごく楽しくて、皆が自由な気持ちになれる場所なんじゃないかと感じています。名もつかないような場所が、実は魅力的なのではないでしょうか。

部屋名どおりに暮らさなくてもいい。公園の中を散歩するように、居心地の良い場所を探してみて欲しい。

田中

「井の頭の家」は、住む人自身がいろいろと住み方を考えないといけないですよね。そういう意味では、住み手にパワーが必要な住宅だと言えますよね。

納谷

そうでしょうか? そう言うと構えてしまって、大変な家って思われてしまいそうです(笑)。僕はそうは思っていなくて、例えば公園に行ったら、皆自由に自分が好きな場所を選んで過ごすじゃないですか。そういう感覚でいいと思うんです。住宅というと皆構えますが、普段の生活の中では、誰でもそういうことを経験していると思いますよ。

田中

住宅となると、どうして皆構えてしまうのでしょうね?

納谷

「○○風」とか「○○スタイル」に当てはめないと不安になってしまうのかもしれないですね。何かに倣ってカッコよくしなければと思ってしまうのかな? ファッションにしてもそうですよね。カッコつけなくていいんです。好きなことをやっていて、その人がその人らしく輝けば、それが一番カッコいいことだと思います。

靴を脱ぐ場所や、棚の使い方も自由。暮らし方に決まりはない。

田中

住宅に関しては、まだまだ現時点ではパッケージ化されたものを選んだり、完成した製品を購入することが、一般的な選択肢です。家とはそういうものだというバイアスが普通あるので、「井の頭の家」のように、どこまでが玄関かわからないとか、洗面室が普通よりも広いと、不安になってしまうという面もあるかもしれません。

納谷

最初に入ったときに、きっと「どこで靴を脱げばいいの?」と聞かれますよね(笑)。でもどこで脱いでもいいんです。1階の土間や階段まで、土足で生活するという考え方もあると思います。

田中

収納についても、あえて隠せる収納はゼロなんですよね。収納さえもはみ出してもいいし、どこまで収納にするかを自由に決められる家になっています。そういうメッセージを皆さんに受け取っていただけるといいですよね。

納谷

例えば玄関にはオープンな棚板がたくさんありますが、半分くらいは靴を置いて、余ったら他のものを置いたりできます。趣味の道具とか、好きなものとか。その境目が絵具の混ざり合うところで、じわじわと空間にグラデーションがついていけばいいと思います。

天井の形状が少しずつ変化する2階。「気ままに楽しんで欲しい」と納谷さん。©吉田誠

田中

納谷さんから見て、他にグラデーションがつけられそうだなと感じられる部分はありますか?

納谷

体育館のような大きなワンルームがドーンとあっても、どうやって暮らすか自分で決めるというのは、やはり難しいですから、空間のそこかしこに、空間の使い方の手がかりやきっかけになるようなポイントを、盛り込んだつもりです。たとえば2階は、空間はつながっていてワンルームなのですが、天井の高さを変えたり、形に変化をつけたりしています。これが全部同じ高さでフラットだったら、スケール感がなくなってしまうと思うんです。家型の天井の下でご飯が食べたいとか、天井が低くなっているところは、間接照明の下にソファを置いてくつろぎたいとか、いろいろ感じてもらえると思います。ただ、その通りにしてほしいとは、まったく思っていません。本当に感性のままに自由に感じて、気ままに楽しんでほしいです。

田中

第一印象で何かひっかかりがあったり、新鮮に感じたりした部分を楽しんでほしいですね。

納谷

気づかないかもしれないけど、ここに入った瞬間に自然と誰もが、そんなことを感じるのではないでしょうか。おそらく、初めてここに来た人は、いろいろなことがいつもと違うということに気づくと思います。誰しも記憶で行動しているので、自分の記憶にないものを見ると違和感を感じるんですね。でもその違和感が、暮らしを良くしていく可能性は高いと思います。

素材そのものの色・質感をあらわした2階。手を加えやすい特徴も。

田中

「井の頭の家」で納谷さんが好きな場所はどこですか?

納谷

一部分ではないのですが、 1階の全体の雰囲気が好きです。楽しくて不思議だし、ギャラリーっぽい雰囲気もありますよね。個室に入ったんだけど、まだ入っていないみたいな居心地は、本当に不思議ですよ。窓で切り取った緑が絵のように見えるところも気に入っています。設計しているときは、アトリエのようなイメージでつくっていたけど、予想以上にギャラリーっぽくなりましたね。別荘と住宅の中間のような雰囲気。別荘ほど非現実的ではないけれど、一般的な住宅ほど生活感がないというバランスになっていると思います。玉川上水を望むという立地が、設計をそのように導いたんです。

田中

どんな人に「井の頭の家」に住んでもらいたいですか?

納谷

日々の生活を楽しんで、何ごとも特別にしない人に合う家なのではないかなと思います。僕は自分へのご褒美の旅行やプレゼントなどがあまり好きではなくて、日常がとにかく楽しいということが幸せだと思っているんです。特別な日にリゾートに行くより、毎日がリゾートのほうがいい。今日と明日は違うし、毎日が特別だと思っています。だから「井の頭の家」で過ごす日々の一瞬一瞬を、思いっきり楽しんでくれる人に住んでもらえたら嬉しいです。

田中

「井の頭の家」の設計を進められるなかで、納谷さんにとって新しい発見はありましたか?

納谷

構造や断熱のクオリティなど、とてもしっかりとした基準を持っているのだなと感じました。リビタは事業主として販売する責任があるわけですから、それを共有した上で、どう応えていけるかを考えなくてはいけないなと思いましたね。

田中

リビタが特に構造や断熱に対する基準にこだわっている背景には、エンドユーザーにとって「中古」というコトバに対するネガティブな印象、つまり建物の寿命が心配であったり、性能に対する不安であったり、そういったことを払拭する意図があります。特に戸建てにおいては、エンドユーザーのそういった漠然とした不安がマンションよりも大きく、また誰もストックの価値をこれまで本質評価してこなかったことによって、まだまだ使える優良なストックであっても、築後わずか30年程度で更地にされてしまう、日本の住宅寿命の根幹の問題があるからです。

納谷

性能面をキープしながらも、まだまだ可能性は広がると感じています。もっと活発に意見交換を進めていければ、建築家とリビタがコラボレーションすることで、さらに良いものを生み出していけると思いますね。

田中

そうですね。耐震や断熱の性能を上げるために、既存の内装をすべて解体しスケルトン状態に戻してから工事をしていますが、年代を経た建物の味わいなど、土地や建物の背景にも歴史や物語などの価値があります。古いものと新しいものが融合する面白さもありますし、戸建てリノベーションの可能性は、今後も高まっていきそうですね。引き続きお願いします(笑)

インタビュー風景。納谷さん自邸「360°」にて。

文:村田保子/撮影:吉田誠、リビタ

 

Scene1はこちら→

 

納谷建築設計事務所 × HOWS Renovation

1号プロジェクト「井の頭の家」 (販売終了)
2号プロジェクト「しらとり台の家」(販売終了)
3号プロジェクト「渋谷区西原の家」(販売終了)

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