HOWS Renovation Lab.の「素材」の定義を考える
素材とは何か? タイルとテキスタイルで考えてみる
昨年HOWSでは
「深沢の家」での「タイル」や
「荻窪の家」の「テキスタイル」の製作を行いました。
これらはタイルやカーテンという「建材」であるように見えますが、
それとは少し違う感覚で製作しています。
「建材」ではなく「素材」として捉える。
建材と言ってしまえば
タイルは壁面に貼り、カーテンは窓に取り付ける
というような限定的なイメージしか生まれません。
しかし「素材」と捉えれば多様なイメージが生まれてきます。
「建材」ではなく「素材」と捉えることで、
「食器」としてお茶請けの小皿に、
「道具」として屋外でタープに。
というような発想が生まれます。
このようにモノに具体的な役割を与えず、
見立て方次第で多様な使い方を発想できる状態を「素材」と呼べるのではないかと考えます。
では、「見立て方次第で多様な使い方を発想できる状態」とはどのような状態なのか。
まず、タイルの例で考えてみます。
このタイルは土の素地感を生かした「常滑焼」の製造法をヒントにしています。表面にツルっとした釉薬を使用せずに、「チャラ」と呼ばれる薄いファンデーションのようなものをかけただけの素焼きに近い状態としています。
その結果、肌触りの良い食器と同じ触感を得ることができタイルを食器として使う発想へと導くことができたのではないかと考えます。
テキスタイルはオパール加工という生地を透かす技法を生かし、
光を透過させたり遮ったりすることで空間に変化を持たせるようにしています。カーテンのようなプリーツ加工(折り加工)をせずに1m×23mで納品してもらい、必要に応じて裁断して使っているので、タープのような長尺での使い方の発想が生まれたと考えます。
これらの例では、
素焼きに近い質感、
プリーツ加工せずロールの状態、
であることで多様な用途を生み出しています。
つまり
「見立て方次第で多様な使い方を発想できる状態」とは
一般的に完成する手前の状態であり、
つまりはそれを作り出すためには
「どの状態を完成とするか」が重要なのではないかと考えます。
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景色を切り取る、シンプルな器のような住まい
荻窪の家
やわらかな光と質感がめぐる住まい