家の持つ可変性とは? ものづくりのカタチを考える
前回のおさらい
前回、ヒダクマでテーブルとベンチを製作したお話をしました。
そこでは飛騨の広葉樹を使った木工のものづくりと3Dプリンターを使ったデジタルファブリケーションのものづくりを紹介しました。今回はこのプロジェクトを通して今後チャレンジしたいものづくりのカタチを考えます。
HOWS Renovationの家づくり
HOWSの家は多用途を受け入れるシンプルな躯体とすることで住まい方が多様な使いこなしをできるようにすることを基本としています。いわゆる「可変性」のある家と表現されることが多いです。
具体的な室名のない空間や木の構造が現しになっている様は、住む人が暮らしを付加していく空間的、心理的「余白」があり、それゆえ「可変性」があると考えられています。
「余白」に機能を付け足すこと
室名のない空間も、人が暮らすには具体的な機能が付け足されます。例えば広い玄関土間の壁面に本棚を作り付けて書斎とするとします。
長年住まう中でこの書斎を違う空間に移動させ、ここをアウトドアスペースとして使いたいとき、壁に固定した大きな本棚は簡単に移動することができるでしょうか?
もしかすると「可変性」があるように見える空間も、機能の付け足しの仕方次第ではその後、その性質は失われてしまうことがあるのではないかと考えます。
「加工と接着」モデル
暮らしに合わせた機能を付け足せる空間は「可変性」があるように思えますが、実はその付け足し方が重要なのかもしれません。
従来のものづくりの手法、例えば、壁に木の板をビスで固定する本棚のような、つまり「加工と接着」のモデルでは元に戻すことが難しく、空間の「可変性」は維持できていないかもしれません。
「組み立てと分解」モデル
このような「加工と接着」が元に戻すことのできない一方向のものづくりだとすると「組み立てと分解」によってリメイクやリサイズを前提とする双方向のものづくりのカタチを探っていきたいと考えています。
例えば、レゴやプラレールのようなおもちゃはそれらをくっつけたりバラしたりして様々なモノを作り遊ぶことできます。家具で言うと無印良品のユニットシェルフなども同じような性質があると思います。これらは一定のモジュールとそれらのジョイントのデザインによってリメイクやリサイズを可能としています。
「仕口と継手」
今回の家具作りでは木造建築の伝統的な技法である「仕口と継手」の技術をヒントにジョイントパーツを製作しました。これらは釘やビスなどの金物に頼らない日本の伝統的な建築の技術です。このような技術を博物館的に過去のものとして残すのではなく、現代の生活シーンに合わせて活用しようと考えました。
このアイデアはヒダクマのサイトで紹介されていた画像がきっかけでした。木と樹脂で作られた「仕口と継手」のモデルは、本来構造体を「接合」させるための技術が、異素材の組み合わせにより「分解」することへの応用に気づくヒントとなりました。
ヒダクマとの製作
今回の家具作りは「仕口と継手」のモデルがヒントとなりヒダクマと共同で挑戦しています。彼らとものづくりをする意義と今後の目標については次回お話しします。
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