レポート

『暮らし』のヒントを探しに~岡山県西粟倉村 視察レポート~ Vol.1

『暮らし』のヒントを探しに~岡山県西粟倉村 視察レポート~ Vol.1

「林業とリノベはどこか似ている」
そう話すのは、地方活性の分野で注目される岡山県・西粟倉村の井上達哉さん。井上さんは(株)西粟倉・森の学校の代表取締役として、西粟倉の木材の活用・流通を手掛けています。井上さんにご案内いただき、私たちは先日、西粟倉村を視察してきました。

林業と、リノベ。一見近いようで遠いようなこの2つの共通点とは。そして西粟倉で見つけた『豊かさ』とは。
西粟倉村で出会った素敵なもの・ことの紹介とともに、3回のレポートに渡り、お届けします。

 

Vol.1 美しい森

西粟倉村は、林業を主な産業とする人口約1600人の村です。
『林業』、それは森とともに暮らし、恩恵を受け、人と木々とが支え合いながら長い年月を共にしていく生業です。

約50年前。著しい経済成長のもと、人工林が急激に拡大した時代がありました。
しかし木を植えても、すぐには利益を得られないのが林業です。植樹し、間伐を繰り返し、何十年も育てたのちにようやく流通できるようになります。
当時は自分のためではなく『未来の子や孫のために』という想いのもと、あたたかい気持ちで植樹をしていたのですね。

しかし年月の中で、日本の材木は輸入材が中心となり、国産材の需要が減っていきました。(木材自給率は約30%!)その結果、山主さんが管理しきれなくなる山も出てきました。若い人たちはやりたいことを求め、都会に出ていきます。
そして、2000年以降、小さな町や村が合併してメリットを出そう、という動きも出てきました。そのとき西粟倉村は、近隣の町村との合併を拒むという決断をしています。

2008年、「百年の森林構想」が掲げられました。植樹から現在までの50年を引継ぎ、さらに50年後の2058年を目標と定め、美しい森を手を加えながら育てていくこと。そして小さな村だからこそ実現できることをする。自立して、循環していく村になる、という強い想いのもと、村ぐるみで挑戦を続けていくこと。
『森』を中心に、村に眠る可能性を新たに見つけ出し、仕事を生み出し、心のつながりを大切にした暮らしづくりをしているのが、西粟倉村なのです。

 

さて、ここで実際に私たちが見た『森』を紹介しますね。

私たちが西粟倉で見たのは、美しく伸びるスギとヒノキの森。
丁寧に手をかけられてきた木々は、空に向かってまっすぐ伸び、美しい樹皮をまとい、光を浴びながら森の奥へと計算されたかのようなスパンで並んでいました。きちんと間伐されているため、足元まで光が届き、苔も美しい色に輝いています。

都市に生き、『森』に触れる機会のない私たちには、とても新鮮な体験でした。

 

足元にゴロゴロと転がる黒い石。正体を聞いて驚きました。

みなさんもご存じの「もののけ姫©スタジオジブリ」で製鉄のタタラがでてきます。それがこのエリアにあったのだそう。
製鉄の際に不要になった溶けた鉄は当時山に捨てられ、冷えて固まったものがこの黒い石だそうです。

間伐体験もさせていただきました!
電動のこぎりではなく、手ノコ!初心者向けに細い木(間伐するもの)を選んでもらいましたが、直径20センチほどの木でも、倒すのは一苦労です。

細い木とはいえ、上を見上げれば5m以上に育った木です。
倒れるときのドキドキ感。周りの木々とザザザーッと擦れ合いながら倒れ、ドオッと地鳴りをたてて横たわる瞬間は、なんとも言い難い気持ちになりました。一つの命に見えたというか…

 

もちろん、通常林業に携わる方々は手ノコではなく、電動ノコギリや大型の重機を駆使して間伐します。自動で枝切りと長さを揃えて切断してくれる便利な重機など、見たことのない重機が働いています。大きな重機は山主さんお一人ずつでは負担が大きいため、共同で購入しているケースが多いそうです。

余談ですが、私たちが手ノコに中腰で必死になっているのを、職人さんたちは遠目に微笑みながら見守ってくれていたとのこと。

私たちは反対に、職人のみなさんがお一人であっという間に太い木を切り倒すのを拝見していました。まずは倒す方向を見定め、電動ノコギリで切り込みを作ります。反対側にクサビを打ち込みながら、慎重に力をかけていき、あっという間に倒していきます。かっこいい、の一言に尽きます!

山の所有者がわかる地図です。細かく区分されています。
大型の重機を通すためには道も必要で、その交渉なども難しいのだそうです。

美しい森とは反対に、残念ながら適切な管理が行き届かなかった森は、『暗い森』になっていくそうです。山主さんのご事情によるところのため、ぐるりと見渡すと、右手は美しい森、左手は暗い森、とはっきりわかる状態です。もちろん、木材としての価値にも大きな影響があります。

 

最後に、森の中で記念撮影。

50年、100年という長い単位で未来を見て行くこと。
手をかけ、長い時をかけて育て、次の世代へ繋いでいくこと。
それは林業とリノベーションの、1つの共通点。

「古い時代に植樹してくれた人の想いと資源を引継ぎ、そこに新たな夢をのせる西粟倉の林業」と、「古い建物を生かして、新たな暮らしの場をつくるリノベーション」には、確かに共通点があります。
そして、「50年以上の時間と手間をかけてやっと材木にまで育つ森」と「永い時間をかけて味わいを増し、価値を増す本来の家のあるべき像」もなんだか重なります。

木が家の材料になるまでには、少なくても70~80年といわれています。
取り壊されてしまう日本の住宅の平均築年数は27年といわれていますが、せめて同じくらいの年月は使いたいですね。

『木』という素材はとても身近なものですが、どのようにして育ち、どのくらいの年月がかけられているのかということは、なかなか知る機会がないものです。
このレポートを読んでくださった方が、少しでも身近に感じ、行ってみたいなと思ってくれたら嬉しいです。

 

『森』を中心にご紹介したvol.1はここまで。
次回はその森からやってくる木材がどう活用されていくか、西粟倉の事例でご紹介します!

 

6月25日(土) HOWS DIY Lab.  feat.西粟倉・森の学校 開催!

西粟倉の木材を使ったカトラリーづくりを体験できます!

その他、西粟倉・森の学校の代表 井上さんとReBITAとのクロストークも予定しています。
詳細はウェブサイト、Facebookで近日公開予定!

※イベントはおかげさまで終了いたしました

□ イベントURL  http://domain-rbt-kd01.sakura.ne.jp/hows-renovation.com/event/diylab20160525/
□ Facebook https://www.facebook.com/howsrenovation/
□ みんなの材木屋(by (株)西粟倉・森の学校) http://zaimoku.me/

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▼vol.2 森から家へ。木材が、私たちの手元に届くまで  はこちら
http://domain-rbt-kd01.sakura.ne.jp/hows-renovation.com/report/nishiawakura_02/

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