『暮らし』のヒントを探しに~岡山県西粟倉村 視察レポート~ Vol.3
Vol.3 移住し、チャレンジする人々。西粟倉で感じた「暮らし」のヒントとは
過去2回お届けしてきた西粟倉村の視察レポート、今回が最終回です。
西粟倉村の、50年・100年と長い時をかけて丁寧に森を育て、次の世代へ繋ぐ「林業」。そして、手をかけることで得られる価値を大切にした商品作り、ダイレクトに消費者と繋がることで生まれる循環。そんな取り組みを紹介してきました。
最終回の今回は、「チャレンジ」する人々と、西粟倉村に集う人々から垣間見られた新しい暮らしの価値について、お伝えしたいと思います。
過去のブログはこちら
▼vol.1 美しい森 はこちら
http://domain-rbt-kd01.sakura.ne.jp/hows-renovation.com/report/nishiawakura_01/
▼vol.2 森から家へ。木材が、私たちの手元に届くまで はこちら
http://domain-rbt-kd01.sakura.ne.jp/hows-renovation.com/report/nishiawakura_02/
■挑戦者募集
西粟倉村は都市じゃなくて、言葉を選ばず言えば「田舎」。主な産業は林業。そんな西粟倉村に、挑戦者たちがやってきます。そして、自分がやりたいことにチャレンジしています。
西粟倉村から発信される「挑戦者募集」のメッセージ。「移住者」や「Iターン・Uターン」ではなく、「挑戦者」。その言葉には、自ら考え・動き、村や世の中に良い循環を生み出すことを重要視していることがみてとれます。そして実際に集まってくる人々。
都会の大きな組織の歯車になるのではなく、自分がやりたいことを実現できる場所として、西粟倉村が選ばれています。もちろんリスクもあります。でも、都会ではかなわないことも、地方(ローカル)ならかなうこともある。そして、すぐ近くでアドバイスしてくれる先輩たちや、同じようにチャレンジする仲間がいる。
気持ちのいい環境がある。豊かな素材もある。そんな場所で、自分なら何ができるだろうか、何をしようかと、ワクワクした人々。
もちろん、ただ誰でも歓迎というわけではなく、先輩方による面接をくぐり抜けてきた猛者たちでもあります。
私たちが出会った彼らは、想いの実現にまっすぐに突き進んでいたり、高い志をもって深く、広く考える人であったり。そしてよい意味で地味に、地道に、自分の道を突き進み、できる限り妥協をしないことで素敵なものを提供している人達でした。
村の中には、そんな彼らが開くお店や工房が点在し、どこも素敵なセンスの佇まいです。森に囲まれた村で素敵なモノたちと出会える、それも西粟倉で感じた喜びでもありました。
いくつかご紹介します。
[1] あわくら温泉 元湯
村楽エナジー(株)が運営する温泉宿です。村楽エナジーさんは、再生可能エネルギーであるバイオマスエネルギー事業に取り組んでいる会社。前回のレポートでご紹介した薪を割るダニエルさんもこちらの所属です。(→vol.2記事はこちら)
西粟倉に湧く温泉は冷泉のため、温めて提供されます。そのための熱を、西粟倉の間伐材による薪でまかなっています。
もともとは灯油など、他から調達するエネルギーに頼っていたところを、西粟倉から生まれる木材(薪)にシフト。新しい循環の形をつくりました。今後は西粟倉の熱供給もバイオマスで賄いたいと活動する代表の井筒さん。
廃業になった温泉旅館だった建物をリノベーションされた建物は、訪れた人がわくわくするような設計デザインに、西粟倉の木材が使われていて優しい印象。木の匂いがしました。
そして温泉も。西粟倉の木の薪で沸かしたお湯は、心なしかやわらかく、とても気持ち良いです。
村の中を流れる川のそばにあり、せせらぎが心地よく奏でます。
□ あわくら温泉 元湯 >> http://motoyu.asia/
[2] FURERU(フレル)
木のカトラリーや器を制作している旦那さんと、ジビエなど地元の食材を使った食事を提供する食堂を切り盛りする奥さんによるユニット。ご夫婦はお二人とも移住者です。
ひとつひとつ手で削ってつくられているカトラリーは、軽く、優しい使い心地。そのカトラリーで、奥さんの食堂で地元の食材を味わう。
食堂があるのは、西粟倉村を一歩出たところにある「難波邸」という古民家を改装した素敵な複合施設で、昔ながらの意匠を大切にしながらリノベーションされた空間も素敵なところです。
鹿や猪などを丁寧に調理したジビエ料理はおしゃれでおいしく、ここだからこそ味わえる料理です。
□ 難波邸 >> http://nambatei.com/
[3] 軒下図書館
「図書館」と名のつく不思議なB&B。もともと、現在のオーナーさんのご祖母様が村内の子供たちに「軒下図書館」として自宅を開放し、本に触れる場を提供していたのだそうです。しばらく空き家になっていたそうですが、海外にお住まいだった現オーナーさんがフランス人の旦那さんと一緒に西粟倉へ移住。現在はB&Bとして宿泊の受け入れをしているほか、フランスパン工房、ヨガ教室、そして語学スクールも開いています。
当時のものである懐かしい絵本(名著ばかり!)や図鑑などが残っており、友人や家族との話もはずみます。ひとつひとつ丁寧に選ばれていることがわかるアメニティや備品類。建物全体すみずみまで手入れが行き届いており気持ちよく過ごせます。
英語で紹介するホーム―ページなどをみて、海外の旅行者が多く訪れてくるそうです。東京や京都・大阪などの大都市ではなく、古き良き「日本らしさ」を体感できるところを求めてやってくるのだとか。
□ 軒下図書館 >> http://www.nokishita-toshokan.com/
[4] 木工房ようび
西粟倉の木で家具をつくっている家具工房さんです。シンプルで優しいフォルムと、使い良い形。日本で使われるのに細かなところまで考えられ、触れると優しさが伝わってくる家具たちが並んでいました。
なんと、1月に私たちが訪れた直後に火災にあい、工房と店舗が全焼してしまうということが起こってしまいました。しかし彼らはくじけず、再起に向けて奮闘しています。村内外のたくさんの人々が応援し、一歩ずつ、前へ進んでいます。
□ ようびの日用品店 >> http://nichiyouhinten.youbi.me/_youbi_t1fnxesdh/
□ 負けるな、ようび、愛してる >> http://youbiloved.thebase.in/
[5] 酒うらら
西粟倉で酒屋をやりたい!!という気持ちをぶつけてきたという酒うららさん。「なぜ西粟倉でお酒を?」とみんな不思議に思いつつも、その熱い想いと、なんだか面白そうな企画にOKが出たそうです。村の中では寄合などのコミュニティがあります。そうした場ではお酒を酌み交わして語り合ったりするので、村にとって「おいしいお酒が飲める」という新しい価値が生まれたようです。
少しシャイな挑戦者、店長の道尾さん。
□ ニシアワー・挑戦者たち >> http://nishihour.jp/interview/urara
そして、最後に別の角度から、もう一人ご紹介。
究極のDIY職人、はっちゃん
はっちゃんは、元は大手企業を勤めあげ、今は西粟倉村で自分の空間づくりに日々取り組む西粟倉村の住人です。
騒音と言えばカエルの鳴き声くらいの豊かな自然にかこまれた別邸で(ご自宅はまた別にあるとのこと!)、自作のお酒をたしなみながらJAZZを楽しむ暮らし。お部屋の中には最高級のステレオのほか、蓄音機やドラムセットまで配備。
木で組み上げられた家は、なんとご自身で設計してご自身で組み上げたというのですから驚きです。使われている木材は、村の中で調達できます。そしてなんでも自分で思うままにつくる。好きなものでその空間を彩り、存分に楽しむ暮らし。それはもう「愛着」を通り越し、まさにあの家が「はっちゃん自身」かもしれません。
敷地の中には田んぼや畑、水車なども。カエルが跳ね、メダカが泳ぎ、四季折々には花が咲くまさにビオトープ。広がる景色はなだらかな山並みと、のどかな村と、豊かな緑、広い空。そんな環境の中になんとステージもあります。大きなステレオを備えており、夏の夜には村の人々と一緒にジャズライブを楽しむのだとか。どこか特別な場所へ出向くのではなく、日々日常のなかでもスペシャルを楽しめる暮らしです。
まだまだ、構想は尽きないそう。愛する家族やお孫さんと一緒に楽しめる空間を、少しずつ作っているそうです。玄関先にはお孫さんの喜ぶ顔が見たくて丸太から彫ったという大きなトトロたち。
都会に暮らしていると、なかなか簡単にはこうはいかないものです。空間のゆとりを得るにはどうしても高いお金が必要。周りに気を使わなければならず大音量で好きな音楽も楽しめない環境。お金を出せば簡単に手に入る消費財と、それに振り回されがちで、手をかけることを避けてしまいがちな人々。自分らしさとは何か、豊かさとは何か、わからなくなってしまう人も多い世の中です。
そんなある種の環境による「しがらみ」から離れ、自由に自分を表現しつづける暮らし。
もちろん、都会にもある種の豊かさはありますが、都会ではないところで実現できる(実現しやすい)豊かさ。手を動かし、少しずつ自分の暮らしを作り上げ続け、楽しみ続ける暮らし。そんな事例を目の当たりにして、私たちはとてもうらやましく思いました。
わたしたちは、HOWS Renovationという戸建てリノベーションのブランドを通じて、本来の住まいのありかたを模索し、発信しています。住まいとは暮らしに大きく密接したもの。長く価値を保ち続け、暮らしを楽しんでいくためには何が必要なのかを、常に考えています。
その例として、私たちが出会った西粟倉村の人々のあり方は、新しい気づきと暮らし方・生き方の提案をくれたように感じています。林業という、長い時間と手間をかけて届けられる生業と、その「時間」をも大切に届けようとする人々。新しいあり方・やり方を模索し、様々なチャレンジに挑む人々と、そこから生まれる価値をシェアすることでお互いに豊かになっていく村の暮らし。日々の暮らしを自由に彩り、自然の豊かさを享受し楽しむ暮らし。
いわゆる昔ながらの「田舎」からは脱却した循環がうまれています。日本全国へこの取り組みが知られ、参考にされています。これからのわたしたちの暮らしの、一つの素敵な参考です。
この新しい循環こそ、地域(ローカル)のリノベーションした姿かもしれませんね。
合計3回にわたった西粟倉村のレポート。長くお付き合いくださりありがとうございました。
ぜひ皆様の「暮らし」への想いも、わたしたちに聞かせてくださいね。
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▼vol.1 美しい森 はこちら
http://domain-rbt-kd01.sakura.ne.jp/hows-renovation.com/report/nishiawakura_01/
▼vol.2 森から家へ。木材が、私たちの手元に届くまで はこちら
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