建築の教育現場に行ってきました!
こんにちは。ウエノです。
今回は、とある建築学科の設計授業にお邪魔してきました。
というのもHOWS Renovationの「井の頭公園の家」の敷地と改修前の建物が設計課題の題材。
HOWSと同じく、既存建物を改修する課題となります。
井の頭公園の家を設計したアラキ+ササキアーキテクツの佐々木さんが先生の授業で、
8人の学生の約2ヶ月間成果を発表する場に招待していただきました。
成果発表は大学の製図室。
発表ギリギリまで図面や模型をつくったり、プレゼンの練習をしている雰囲気は建築学科ならでは。
2人の建築家、青木弘司さんと能作淳平さんをゲストに迎え発表スタートです!
□KOJI AOKI ARCHITECTS
□JUNPEI NOSAKU ARCHITECTS
今回、学生からの提案は、
・パブリックな空間が家に入り込む住宅
・住みたい街、吉祥寺でのシェアハウス
・三鷹の生産緑地を生かした八百屋
・お風呂とお酒、趣味を拡張した銭湯と酒屋のある住宅
・街に縁側として家を開く提案
・本棚が家の中心にあるジブリ本屋
・つながりを作り三鷹の地域価値を高める提案
・既存の部材に注目した設計
みなさん、それぞれのアプローチで住宅にとどまらない提案をされていました。
特に三鷹・井の頭・吉祥寺という地域特性が含まれた提案が面白かったです。
確かに、三鷹地域には生産緑地がたくさんありますね。
銭湯の提案ではゲストの青木さん、能作さんから質問。
青木:「この提案で君はどんな問題を解決したい?」
学生:「都心に人が集中していく状況で、郊外にしかないものを活かした暮らしを提案したい。近くには運動公園があり、運動後の銭湯とお酒はここでしか味わえない。それらを提供する職が住とが一体化した暮らし。ここでしかできないことで、職住が一体となった暮らしを提案したい。」
能作:「テーマ設定がおもしろいけど、具体的な想定をもっと設計してほしいね。」
青木:「もっとディティールをスタディ(検討)してみたら?」
緊張感がすごい。。
一見すると厳しい質問や意見が飛び交う中、
より面白い提案にするにはどうすればいいかを先生と学生で議論していきます。
面白い提案ほど激しい議論となりますね。
(プレゼン後の休憩時間には、少し緊張感が解けた中で先生からアドバイスをもらう姿もありました。)
建築設計の課題なので、
デザインされた形に対する意見ももちろん交わされるのですが、
「この八百屋儲かるの?」
「酒屋で買ったお酒はその場で飲めるの?」
「そのナッツ屋すぐに潰れちゃうよ!」
「誰がお金を出すのだろうね?」
など、アイデアが実際に成立するのか、システムに対する議論もそれ以上に求められたりもします。
「うーん、、」
「いやでも、」
「自分はこう思うのですけれど、、」
学生も自分のアイデアを伝えようと言葉をひねり出していきます。
また、佐々木先生、アラキ+ササキアーキテクツの設計手法の中に
Hands-on-Approach(ハンズオンアプローチ)というのがあります。
実際に手を動かして、手で作って考えていく。
今回の課題ではこの手法を取り入れ、設計したアイデアの一部の原寸大モックアップも作っていました。
ある学生は
「モックアップを作ることで、自分の設計したものに、縮尺模型では感じなかった見た目の重さを感じた。
もっと軽快な感じにしたかったのに。」
などの気づきが得られたようです。
佐々木先生は、
「モックアップを作ることが目的や完成ではなく、それによって得られる気づきが重要だよ。」
とアドバイス。我々もハッとさせられる言葉です。
議論は白熱し、気がつけば始まってから3時間。
学生の皆さんから様々な刺激を得ることができました。
今回、参加させていただき
「議論を生む提案をすること」
「アイデアを相手に伝わる言葉にすること」
「目的と手法を取り違えないこと」
などの大切さに気づけました。
学生の皆さんの提案はどれもオリジナリティがあふれていて興味深かったです。
実は学生の皆さんは設計前に、実際に「井の頭公園の家」を見学しているそうです。
改修後の空間を見ているということは、それに引っ張られた提案になるのでは?
と思っていましたが、全くそんなことはありませんでした。
見慣れた井の頭公園の家がそれぞれ全然違う空間になっていました。
アイデアやデザインの手法次第で、同じ住宅の改修でも様々なゴールにたどり着くのですね。
最後は先生方からの全体講評。
・青木さん
「リノベならではのことが考えられていた。
リノベーションはその操作、手法を考えることが重要だが、それが目的化してはいけない。
何のためにするのかを考えていきましょう。」
・能作さん
「リノベは形式的に考えられない。今そこにあるものに対してどうするかを実践的に考えるもの。
それをどう理論的に解決するかが重要。うまくいったこと、いかなかったこと。
トライアンドエラーを繰り返すのがいいと思います。」
・リビタ戸建事業部、黒田から
「題材の物件は実際に販売したもの。提案に事業として成り立つかの側面も考えてみて欲しい。」
最後に佐々木先生から
「実際に私たちが設計した物件を題材にし、
この講評会に建築士と不動産事業者を迎えて議論することがしたかったので今日は満足です。」
建築士として教育者としての佐々木さんに脱帽です。
t_ueno
HOWS Renovation Concept House - 井の頭公園の家