ヒント

空間を仕切るまとめ

空間を仕切るまとめ

空間を仕切る①

こんにちは。戸建事業部のウエノです。
今回は「仕切る」ことについて。

「仕切る。」
ある連続した空間を区切り、分け隔てること。

住宅においては、その方法は様々。
ただただ壁を立てることで物理的、視覚的、聴覚的に仕切ることもあれば、
家具を置くことで空間に役割を与えることで仕切りをつくることも同様。

【着脱可能な建具】

日本には昔から、障子や襖といった木と紙でできた建具があります。
江戸時代、大阪では長屋の借家人は障子などの建具は自ら調達する必要がありました。
そのため、建具の高さは5尺7寸(1730mm)に統一され、基本的にどの長屋にも同じ建具をはめ込むことができました。

他にも、夏には簾戸(すど)を、冬には襖(ふすま)を入れ替える「建具替え」といった習慣もありました。
このように、日本の建具は簡単に着脱が可能なのです。

【仕切りの素材】

素材によって仕切られるものは変わります。
例えば、
簾戸は葦や竹などでできています。
物理的に空間を仕切りますが、目線や風は通り抜けます。

襖は木の枠に紙が貼られた建具。
昔の障子は何十枚も紙を重ねて貼っています。
物理的、視覚的に空間を仕切り、また紙の断熱効果で冷気や熱も仕切ります。

布でできたカーテンならば、
窓につけることで視覚を遮ることで家の内外の領域をはっきりと分けます。
このように空間の特性や求める役割によって、仕切りのカタチは変わります。

【仕切りについての新たなプロジェクト】

今回、あるテキスタイルデザイナーと新たな仕切りをつくります。
それは、テキスタイル・布ではありますが、決して単なるカーテンではありません。

例えば、木の柱間に腰より上だけに布を張るとどうなるのか。
それは、空間を仕切るだけではなく、
透過することにより、よりその向こうの存在が際立つこともあります。
背後を軽く仕切ることにより、作業に集中できる環境を得られるかもしれません。

HOWS Renovationの物件では柱梁が表しになった大きな空間を持つものが多いので、
どのように空間を仕切るかというテーマは常に考えていかなければなりません。

△竣工後の写真。正面奥にキッチンがある。

 

△キッチン背後にテキスタイルを張ることで、視界を少しさえぎりつつも、向こうの様子が透けて見える。

テーマは

・気軽に着脱が可能なこと。
・素材の特性とその役割を使い分けること。

いったいどのような仕切りができるのか。
我々も楽しみなプロジェクトが始まりました。

t_ueno

□「仕切り」がテーマのHOWS Renovation の過去事例
 ・武蔵小金井の家(木製建具)
 
しらとり台の家(テキスタイル)

空間を仕切る②

戸建事業部のウエノです。
前回はテキスタイルを使って空間を「仕切る」ことについて考えていることを紹介しました。
空間を仕切る①

その中で、日本において昔から使われている「仕切り」、つまり障子や襖などの建具の話を少ししました。
今回はその建具の話をもう少し。

その昔、大阪の長屋(貸家)では建具は借り手が自ら調達することとなっていました。
建具の寸法が規格化されていたために、どの長屋にでも転用することができたのです。

大阪の家は「京間」と呼ばれ、畳の大きさを基準にして作られています。
また、京間の地域に大量の長屋が建てられたため、
畳や建具は転用されやすいものになったのかもしれません。

しかし、建具は四方枠で囲われているため、違う寸法の部分にははめ込むことができません。
上枠をはめる「鴨居」、下枠をはめる「敷居」、左右の建具の重なりや、柱との取り合いなどと寸法を合わせる必要があるからです。
実際には、空間に合わせて専用の建具を作る必要があります。

しかし、本来、建具は転用されたり、季節によって取り換えたりしてきたもの。
その仕切りとしての気楽さの考え方をうまく取り入れつつ、現代の住宅でも成立する転用を考えていきたい。
今回取り組むテキスタイルは布という素材のやわらかさが、取り付ける部分の寸法のズレを吸収して、家のどこにでも転用できるようになるのではないか。
そんな、日本に昔からある建具という考え方をヒントにテキスタイルで「仕切る」ことを考えています。
まずは今春ごろに竣工予定の物件での採用をめどに考えています。

t_ueno

空間を仕切る③

戸建事業部のウエノです。
前回に引き続き、「仕切り」について。
空間を仕切る①
空間を仕切る②

現在、テキスタイルをつかった仕切りを考えている最中で、
前回は日本に昔からある障子や襖などの「建具」の考え方を紹介しました。
今回は障子のような振る舞い方で暮らしの中で使いこなせる「仕切り」を
テキスタイルで考えていきます。

そもそも空間を仕切ることで得られる効果とは何なのか?
期待できる効果を生みだすためにはどのような仕掛けが必要なのか?
このあたりを思考しながら、テキスタイルデザイナーと設計事務所と一緒になって考えています。

例えば下の画像の1枚の布。
同じ布でも使い方次第で得られる効果は変わってきます。
この場合は、大きなワンルームを1枚の布で緩やかに仮説的に仕切ることで
落ち着いたスケール感のあるダイニングが生まれます。

また、このテキスタイルはオパール加工という処理がされており、
布が透けている部分があり、向こう側が透けて見えるようになっています。
これにより、空間の奥行き感を強調されています。
(色が違うことでも印象が変わりますね。)

上の例は内部空間を簡単に2つに分けた例。
次の例は、窓際につけることによって外からの視線を遮っています。
いわゆる一般的なカーテンと同じ使い方です。
上の例と同じ布ですが折り返して2重にしている分、視線の抜けがなくなりました。
また、窓際につけることによって、開口部から入ってくる自然光が拡散されて
室内に均質な明るさが入り込んできています。
視線を遮り明るさを和らげる目的なので、わざわざ大きさを測ったカーテンでなくとも
身の回りにある布で簡単にできますね。

また、布を貼り、窓を開けることで空気の流れが可視化されます。
このように、「仕切る」ことは物事を「遮る」だけではなく
空間を強調したり、光や風を引き立て存在感を与える効果もあるようです。

使い方やデザインによって変わる効果を活かしながら、
テキスタイルの仕切りを考えています。
そして次のステップとして、テキスタイルをどのように設置して、どのように使うことができるのかを考えていきます。

深沢の家

t_ueno

空間を仕切る④

戸建事業部のウエノです。
前回に引き続き、「仕切り」について。

空間を仕切る①
空間を仕切る②
空間を仕切る③

これまでテキスタイルによる仕切りについて考えていることを紹介してきました。
今回は、テキスタイルそのもののから少し離れて、それを設置するカタチ、「仕切り方」について考えていきます。

例えば、前々回で紹介した、今回のプロジェクトのヒントになっている障子や襖などの建具。
簡単に取り外せたり、取り替えることができる良さ。
そしてそれらを取り外したり、取り付けたりする際の所作、
その所作が実は魅力的だったりするのかもしれません。
また、それらを仕舞うことまで含めたデザインが「仕切り方」なのかもしれません。

現在、テキスタイルの打ち合わせと並行して、テキスタイルを取り付ける「枠」のデザインも考えています。

「枠」は、「テキスタイル」と「建物」をつなぐ存在になります。
それらの接点をどのようにデザインするのか。
「枠」があることで「仕切り方」の所作の魅力を引き出せるか。
このような点がポイントになってきそうです。

どのようなものがいいのか。
考えれば考えるほど、世の中にはカーテンレールやロールスクリーン、つっかえ棒など
すでに便利で理にかなったモノが存在していることに気付きます。

ただ、そういったものには、
・所作まで含めた魅力があるのか。
・仕舞うところまでデザインされているのか。
・そのモノ自体に愛着が湧くのか。
などを考えると不十分であることにも気付きます。

どこでもこれらが成立し、もっと気軽に空間を楽しめる「仕切り方」を考えていきます。
これらのアイデアを実装する予定の家も今春には竣工します。
また、前回までに紹介したテキスタイルデザインもほぼ完成してきました。

「テキスタイル」・「枠」・「建物」
これらを同時並行で作りながら「仕切り方」を考えていってます。

t_ueno

空間を仕切る⑤-テキスタイル印刷工場見学-

こんにちは。
戸建事業部のウエノです。
今回はテキスタイルを使った仕切りについての5回目のお話し。

□空間を仕切る    

昨年秋から始まったプロジェクトがいよいよ形となりました。
テキスタイルデザイナーの(株)pole-poleと設計事務所のAIDAHO、そしてリビタで
試行錯誤してきたテキスタイルの間仕切りが完成しました。
今回はその製作の現場、テキスタイル印刷工場での様子をお伝えします。

【テキスタイルのプリント】

今回製作するテキスタイルは3つの表面でデザインしています。

・何も印刷しない白い布の部分
・オパール加工し透けた布の部分
・染料で色をつけた布の部分

です。

この3種類の大きさや配置のバランスを変えることで、
役割の異なるテキスタイルの仕切りを作っていきます。

ここでは25mもの長さの印刷台にロールの布を貼り付け、
幅1mほどの型枠で1枚ずつ手でプリントしていきます。
布を台にセットするのも、染料を練り合わせるのも職人の手作業。
準備段階から、見慣れない光景であふれ、期待が大きくなっていきます。

大小の三角形をレイアウトした2つの型枠を使って、
オパール糊と青緑色の染料を順番にプリントしていきます。
プリントの瞬間は動画でお届けします。
リズミカルなハンドプリントの音と、真っ白な布にパターンが生み出される瞬間をお楽しみください。

□オパール糊のプリント

□染料のプリント

【アーカイブ化されるデザイン】

型枠は1度つくると10年ほど保管するものもあるらしく、工場にはものすごい数の型枠が本棚のように仕舞われていました。
その時だけのデザインではなく、向こう10年先も求められるデザインを考えさせられます。
見た目は網戸のようなものですが、意外と重くなかなかの重労働だと想像できます。

【ハンドプリントの世界】

このように型枠を使い、手でプリントすることで、インクジェットでは表現できない
微妙な色の乗り方の強弱もつけることができるそうです。
工場内の気温や湿度も色の乗りに影響するようです。
仕上がりを図面や色番などの文字情報だけではコントロールできないところに職人の技や経験が光るのだと思います。

染料自体も粉を手で調合させ仕上がりの色味に近づけていきます。

我々の知らないプロダクトの世界でも、
基本は人の手によって作られていることを改めて実感しました。
デザインすることと、それを形にすること、
作り手同士の相互理解が深まることによって、
一つの良いものが生まれるのだと思います。

このあと、2つめの工程、熱加工に移ります。
プリントされたテキスタイルは熱を加えることによって、
オパール糊がついた部分は半透明となり、
染料がついた部分は色が布へと定着するようになります。

最後に、1枚のサイズを決め縫製し完成となります。
完成したテキスタイルは荻窪の家に取り付けました。

実際に空間に取り付け、家とテキスタイルと人の関係がどのように変わるのか。
たくさんの人に見ていただき、様々なことを感じていただきたいです。

□テキスタイル工場

t_ueno

 

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